さて、前回の記事からそこそこ経ってしまった訳だが、前回はマジカルミライのスクリーンサイズに、あれこれ円盤から比率を引っぱり出してみたりと「妄想」をしてみたわけだが、思ったより記事が拡散されており、中にはファンメイドライブ (非公式ライブ) でそこそこ有名な、長岡ライブの関係者からもご指摘をいただいていたりと、非常に有益で、ためになる考えをご教授いただけたと思う。
とはいえ、実は元々「後編」にしようと思っていた記事の内容は7割ほど完成してしまっていたので、今更修正加筆を加える訳にもいかず、確かに指摘の通りだ、と思った部分もあるので、とりあえずは自説 (説ってよりは妄想なわけだけど) を披露した後に、反論とかご指摘に対して検討を加えたいものだと思った。
なーんて言ってたら、THUNDERBOLTに参加しまくって感想文を書いてたり、どこぞのタブレットをイジリまくってたりして、3か月ぐらいこの記事は下書き状態で塩漬けだった訳だが… とはいえ、THUNDERBOLT参戦を通じて面白い話も聞こえたので収穫もあった。THUNDERBOLTのワールズエンド・ダンスホールで、まさに指摘箇所のひとつを検証することができたものである。
また目測的には6mだったし、どうやらTHUNDERBOLTの透過スクリーンはマジカルミライ10th Anniversary 札幌公演のスクリーンと同じものを使用しているらしく、マジカル札幌のうち両端1枚ずつを抜いてる (5枚から3枚に減らしてる) っぽいので、マジカルミライ用のものは10mであっているとは思うのだが… 写真なんて撮って検証しようものならアウトだし、感覚論で論じるのは好ましくない。
…とまぁアレコレ考えすぎて頭が暴発しそうだ。やるかは未定だが、いつか「アンコール編」とか後ろにくっつけておくつもりだ。THUNDERBOLTのように、みーく!みーく!って呼び出してもらえるといいかもしれない。という訳で、今日は前半で行った妄想を、もう少し深堀りしてみようと思う。
…本当に12mなのか?
さて、前回の終わりに12mのままなのか、10mに短縮されたのか、映像資料の中では一切明言されていない事から、確定する方法を考えねばならない、と言った。さて、どのようにして「客観的要素」から、どこかの辺の数字を得ようか…
実は当初は初音ミクの身長からスクリーンサイズを逆算をしていた (初音ミクの身長が正しいと仮定して、比率に代入する。前編でやってた検算のこと) が、その計算結果をこのブログにする前に、知り合いに投げた所、面白い指摘があった。
とりあえず、スクリーンの幅を確定させよう
その為には市販で売られていて、長さが一定の椅子とかを使って幅を割り出すところからね
そもそもスクリーンに立つミクさんの身長が公式どうりなのか、、、、、そこもはっきりしてないしね
モノサシになる物が無いところから、長さを導き出すのがめんどうよw
んで、椅子って言ったのはスクリーンかAブロックの何番の席から何番の席までか、それが分かれば長さだ出せると考えたからだね。売り物の椅子の幅は基本一定だろ?
そう、本当にスクリーン幅は12mなのか?と言うことである。「いやいや、前回まで公式 (メイキング映像) や半公式 (中の人1号) が12mって言ってるって言ってたじゃねーか!お前はアホか?」と言われたら確かにそうだ。ただ、これにも理由がある。
この手の制作物語はシナリオありきというか、「作られたストーリー」である事が多々あるのだ。完全に嘘を言ってることもあれば、「誤解を招く言い方」によって受け手 (消費者) 側の「勝手な誤解」に期待することもある。今回であれば暴論として「158cmの逆算から幅12m」と言う数字を導き出してる可能性さえあるのだ。
って言う事で、マジカルミライに配置されるパイプ椅子からスクリーンのサイズを逆算してみて、その上で第3世代透過スクリーンのサイズを特定するのに使ってみようと思うのだ。
マジカルミライ2015
さきに第2世代透過スクリーン (2015~2019) のサイズを見たいと思う。都合が良いことに、マジカルミライ2015のLIVE&MAKINGには、こんなワンシーンがある。
透過スクリーンの上手 (ステージ右) 側が、A7/B7ブロックの右端とほぼ同じ位置なのである。また、A6/B6ブロックの中央が、ちょうど透過スクリーンの中央と同じ位置になっていることも分かる。ここで、当時2ch (いまの5ch) に出ていた座席予想表を見てみよう。
当時の座席予想データを見る限り、武道館の座席配置は左右対称だ。つまり、マジカルミライ2015においてはA5ブロック1番から、A7ブロック8番 (合計24席分) が透過スクリーンの位置となる訳である。
また、座席にA3サイズ (297×420mm) の紙でブロックを示しているのが分かるし、パイプ椅子の平均幅は405mm~455mmであることを考えれば、1席あたり約420mmと計算出来るだろう。通路に関してはパイプ椅子と、シーンに写っている成人男性の背中から推定する他ないがパイプ椅子2個分ぐらいにはなるだろう。おおよそ1m弱の計算だ。
\((8\times3+2\times2)\times420=11760\)と言うことで、11.76mと出てきた。これを既に分かっている値に当てはめてみよう。
\(11.76\times\frac{1}{6}=1.96\)
\(1.96\times\frac{4}{5}=1.568\)
既に出ている値に近い数値になった。したがって、カメラの歪みなどを鑑みた時、第二世代の透過スクリーンのサイズは、先の記事の数字と大差はないといえよう。
スクリーン幅 (m) | スクリーン長 (m) | 初音ミクの身長 (cm) |
約11.76m (逆算値) | 約1.96m (推定値) | 156.8cm (推定値、だいたいそんなもの?) |
マジカルミライ2021
さて、第3世代透過スクリーン (2020~2022) のサイズを見たいと思う。マジカルミライ2021の円盤を見ると、一曲目からこんなシーンが出てくる
見えにくいとは思うが、これは透過スクリーンの上手 (ステージ右) 側が、A5ブロックの右端+α程度である事が分かるシーンになる。さて、この時の座席 (予想) 図を確認してみよう。
いつものように、5列目中心を軸とした左右対称な構造になっているのである。したがって、左端も同じであると推定できるし、実際それが確認できるシーンもいくつかあった。つまり、マジカルミライ2021ではA5ブロック (+左右通路の少し) がスクリーン幅と等しい、と言える。
また、ブロックは縦20列、幅20席であり、それを1席ずつ引き離している構造である。またブロック番号を表す紙はパイプ椅子の平均から考えてもA3だし、マジカルミライ2015の時と同じ420mmで計算しようと思う。まずはブロックだけの幅を計算しようと思う。
\(20\times420=8400\)なんとブロックの座席分だけだと8.4mしかない事になる。もちろん、実際には誤差があるにせよ、仮にも12mだったとした場合、両端にそれぞれ1.8m、つまりパイプ椅子4つ分相当ずつ伸びてる (合計3.6m) 必要がある。これは大体通路の幅と等しいものになる。
しかしながら、他のシーンを観測しても、通路の半分ぐらいしか伸びてないようにしか思えないのである。したがって、24席×420mmの10080mm (10m強) しか生えてないといえるのではないだろうか?
\(10.08\times\frac{1}{3.4}=2.964…\)
\(3.53\times\frac{0.52}{1}=1.541…\)
スクリーン幅 (m) | スクリーン長 (m) | 初音ミクの身長 (cm) |
10.08m (逆算値) | 約2.96m (推定値) | 154.1cm (推定値、少し小さい) |
少しミクさんが小さい気がするが、第一世代スクリーンの時も似たような感じだったので、極端な誤差が出てるとは思えない。したがって、ブロック幅からの特定だと10m説が肯定されうるのではないだろうかと思うのである。
補足情報 (マジカルミライ2020)
マジカルミライ2020に関しては、このような座席位置から推定できる情報が見当たらなかったが、メイキング映像に面白いシーンが映っていたのである。SEGA Motion Capture Studioにおいて、ライブ用モーションを「作っている」シーンである。そのシーンには画像の左側に支柱が複数本立っているなか、両端に緑色の紙に「5」と書いてあり、それが貼ってある支柱が見える。これが1mごとの支柱だという証拠にはなり得ないだろうか?
また、「愛されなくても君がいる」のモーションキャプチャが行われているシーンを比較してみよう。
LIVE&MAKING
Focus on Singer
まず、「3」と書いてある支柱の位置を特定しよう。こういう時にはまず消失点を探して、何と平行になるかを見てみるのが良い。
という事で、おおよその位置として斜めに生えている柱と、その上の鉄骨がおおよそ3と書いてある支柱と重なる事が分かる。
したがって、モーションキャプチャーのシーンの時、この人が3と書かれた支柱の前に居た事がおおよそ分かる。また、左端のプロジェクターと大体重なると見ると、幅が10mとしたとき、中央から5mのうち、3mあたりの位置に居る事になる。
だとすれば、あの支柱は3m地点であったことを示していた可能性が高いといえるし、マジカルミライ2020以降の新比率スクリーンについては10mである可能性が非常に高くなってくるのではないだろうか?
結論
マジカルミライ2013から2019では12m長スクリーンである第1世代および第2世代スクリーンが採用され続けてきたところ、マジカルミライ2020以降で採用されている第3世代スクリーンは10mと短縮された代わりに、高さのあるスクリーンが使われているということが、映像から推定できる情報からも、また外部のサイズが確定しているものとの比較からも言えるのでは無いだろうか。
したがって、上手から下手まで走り抜けるという観点から見たら、マジカルミライはかつてより「劣化」したと表現することもできてしまう。また、過去のライブ曲なども第1・第2世代スクリーン向けの12m長を最大限に活用したモーションであった場合、第3世代スクリーンと完全な互換性を担保するには再キャプチャが必要となってしまうだろう。
なお、これに関しては実態としては手直しで、強制的にモーションを合わせることで対策していると考えられる。これは走り抜けるシーンなどで、足の着地地点を少しずつ後ろにずらすことで、両端1m分を削減する技であるが、当然足が滑っているというか、ムーンウォークのように見えてしまう問題が発生してしまう。
しかしながら、高さが確保されたことで、従来は実現が困難だったジャンプなどに対する耐性が強くなったことが第3世代スクリーンの利点の一つとなり得る。それこそ、マジカルミライ10th Anniversaryの1曲目、ネクストネストで飛び上がって出てくるミクさんなんかは従来のスクリーンだったら出来なかった事である。
今回は詳しく論じないが、他にもミクパ・MIKU EXPO用に採用されている6mスクリーンの比率と高い互換性が確保できるようになった事も利点として挙げられるだろう。ミクパ事務局を吸収する形で出来たMIKU EXPOは当然に、これらの亜種とも言えるTHUNDERBOLT、初音ミク×鼓童で用いられているスクリーンはミクさんの倍くらいのサイズのある、第三世代のスクリーンの高さとおそらく同じぐらいのものを採用していたからである。この辺の検証はアンコール編に先延ばししたい。
感想 (前編・後編の分)
さて、この記事も中々長くなってしまったので、さっさと終わらせよう。
課題点
正直、言ってしまえばここらへんまでが個人にできる限界である。映像からしか調べられないので、正しい計算であるかも分からない。なんなら映像をベースにする以上、画像をかなり引用せざるを得ないが、それも著作権的なリスクである。それでもなお、論じたいと思ったのである。
また誤差は確実に発生してるので、あくまで参考として見て欲しいし、公式や関係者がこれを見て「こいつバカなことやってるわ」って笑ってるかもしれない。ただ、これをきっかけに調査する人が増えるなどの影響を与えられたり、何か良い測定方法があればコメント欄で教えて欲しいものだ。
Proシリーズ向けiPhoneに入ってるLiDARセンサーは比較的正確な数字が出るとはいえ、カメラなので会場で出すのは御法度かつ論外だが、マジカル23では巻き尺を会場に持って行って計算してみたいものである。最低でも、スクリーンが座席何個分かの測定はやっておきたい。こんな記事を出すことでクリプトンに目をつけられたり、怒られないといいが。
興味深い点
かつて、ライブ制作がほぼセガのお仕事だった頃は、内製ツールや内部専用のアレコレを堂々と映していたりした。それこそ、大感謝祭のメイキング映像ではSoftimage (XSI) を用いた最適化や、Project DIVA Arcadeをベースとしたライブ用映像レンダリングソフト (WOWOWで放送されたMIKU EXPO 2016 Japan Tourのメイキング映像では後継システムであろう「FTシステム」が出ている) が出てきたり、マジカルミライ2015でもパイプ椅子からの測定に使った画像に「調節用グリッドと、様々なポーズをとったピアプロ・キャラクターズ」が見えていた。とにかく、中の人たちが見てるものが、ちらちら混じっていたのである。
しかし、ライブ制作がほぼクリプトンのお仕事になった頃から、制作現場を映す時にモザイクを入れたり、テクニカルな情報が漏れないようにカメラの動きを制限したりと、そもそもライブ制作現場より企画展側を中心に映した、内部にしか見えないものが「漏れない」ように管理されたメイキング映像が急増した。マジカルミライ2020以降の新スクリーンを分析するのが困難だった理由もそれだ。
外部の人間なので情報不足に文句を言える立場では無いのは百も承知だ。と言うかこんな一般人にでも分析できるような情報が出てるなら、資力のあるファンメイドライブや競合にパクられてしまうだろう。それこそ社風の違いとか、そもそもセガが情報を出し過ぎてたと言うことも出来るのかもしれないが、個人的には昔のメイキング映像の方が面白いし、楽だなぁと感じることが多かった。
一般論的な感想
これまでずっと文句ばかり言ってきたが、こんな分析が大好きな変人を無視して、通常のファン視点で見れば、ジャンプの表現やEXPO向けデータとの互換性向上など、様々な表現ができるようにミクさんは「進化し続けている」のであって、技術的には劣化していたとしても進化しているという「魔法」にかけられているのだから、これこそが「マジカル」ミライなのかもしれない。
初音ミクを召喚する「魔法」に、スクリーンの幅なんて関係ないし、一般人の気にしない技術的に高度な事を実現したなんていう事を誇るより、かえって自由度が増して「ジャンプ」できたり、EXPO世代の楽曲を流用でき、使えるポテンシャルのある楽曲が多い方がいいに決まってる。
こんなことを言っておいてなんだが、似た事は過去にもあった。かつて、R3システムといえばSNOW MIKU LIVE 2018に代表されるようにリアルタイムで観客の動きに反応するという性質を抱えていた。そう、ローリンガールで「もう一回、もう一回」なんて叫んで、ミクさんにダメ出しをされたものである。
これの実現にはリアルタイムレンダリングなデータを透過スクリーンに流し込んでいたのではないだろうかと (僕は) 思うのである。その代わり、17モデルの品質はセガモデルに到底及ばなかった。リアルタイムレンダリング (即時生成) と、プリレンダリング (事前生成) には大きな品質の違いがあるのだ。
しかし、19モデルがR3を代表するかのようになってからはというものの、透過スクリーンに映るミクさんの品質は、ある程度セガ系モデルに近いものとなった。これは (おそらく) プリレンダなデータを透過スクリーンに用いるようになり、リアルタイムレンダリングがサービスモニターに投射される側面や背面、顔のアップ映像だけになったからではないかと思うのだ。実際、詳しく見てみると正面からの映像と、側面や背面、顔のアップ映像の影の付き方などが変わったりしている。
つまり、2017年のR3と、今のマジカルミライなどで用いられているR3は、同じものではないのだ。ただ、技術的観点で見ればダウングレードだが、マジカルミライでの安定した運用や、ダウングレードしたとは言え、従来見ることの出来なかった側面や顔のアップが見えるという進化は実現した観点では成功である。
さらに近年は、側面や背面、顔のアップ映像のような、従来的なR3らしさのあるリアルタイムレンダリング箇所でさえ、徐々にプリレンダなデータとの合成に切り替えているようである。
このように、今回のスクリーン長の短縮化の事例は、R3のダウングレード事例と重なる部分がある。クリプトンのやりたい事は、技術自慢よりかは「消費者をどう魔法にかけるか」という観点で見ているような気がするのだ。だとすると、スクリーンの変更も理解できる部分があるのである。カタログスペックでは語れない何かがあって、12m*2mなスクリーンから、10m*3mなスクリーンに変更されたのではないだろうか。
ただその理由はきっと、本職の人にしか分からないのだろうが…
参考文献
以下の映像より本記事の画像は引用しております。
- ミクの日大感謝祭 特典版BD
- マジカルミライ2015 LIVE&MAKING
- マジカルミライ2020 LIVE&MAKING
- マジカルミライ2021 (本編BD)
- マジカルミライ10th Anniversary (本編BD)
- 札幌公演の配信も含まれます。
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